遺伝病を減らそう!

犬の遺伝病研究会は、犬を含む小動物の遺伝性疾患の
病因、病態の解明と治療の発展に貢献するとともに、
人と動物の健康と福祉の向上を支援することを目的とした団体です。

【遺伝病とは】

遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)とも呼ばれ、全ての生物がそれぞれ持つ設計図であり、全ての細胞の中に含まれている生涯変わることのないものです。

遺伝子は4種類の塩基(A・T・G・C)の配列によって決まっていきます。この遺伝子配列が本来の配列と変わってしまうことを遺伝子変異と言います。変異の原因は、塩基置換・欠失・挿入など様々なパターンがありますが、一箇所の遺伝子変異が起きただけで、重篤な遺伝病が発現してしまうことが少なくありません。
こうした遺伝病は、一代で終わらずその変異遺伝子を保有する親から子へと受け継がれていきます。更に、両親共に変異遺伝子を保有するケースでは、子が遺伝性疾患を発症する可能性は非常に高くなってしまいます。

遺伝病が発症している場合、誰もそうした犬を繁殖に使用することはないはずです。しかし、キャリアと呼ばれる変異遺伝子を保有する犬は、外見上は健常であるため、飼い主さんも無意識のまま繁殖に使ってしまうことが少なくありません。そうしたキャリアから、遺伝病が広がっているものと考えられています。

また、遺伝病は先天的に異常や疾患が見られるタイプのものだけでなく、子犬時代は異常が見られず、成犬になって突然発症するタイプのものも少なくないのです。今は元気そうに見える愛犬が、ある日突然重篤な遺伝病を発症し、闘病生活が始まってしまう可能性も充分に考えられます。

日本国内の遺伝病検査機関と連携を取ることで、遺伝病検査を通じ、臨床現場の獣医師、勤務スタッフの方々の獣医療をサポートすると共に、愛犬の健康を考えていらっしゃいます飼い主さんの生活もサポートしたいと考えております。

遺伝病について知らなかったために、精密検査を続けていたり、有効でない治療を続けているというケースも少なくありません。また、遺伝病についての正しい知識を飼い主さんへ伝えていくことで、今後の展開や治療方針、愛犬との付き合い方などについてのシュミレーションをしてもらうことが、捨て犬増加の歯止めにも繋がると確信しています。

【遺伝病の発現理論】

生まれてくる子犬たちは、父親から半分、母親から半分の遺伝子を受け継ぎます。例えば父親がAB、母親がabという遺伝子をもっているとすると、子犬の遺伝子はAa、Ab、Ba、Bbの4種類それぞれ25%の確率で子犬が生まれてきます。

下図は、親犬から子犬への遺伝子の継承を示したものです。遺伝子の変異は一定の確率で子孫へと受け継がれていくのです。

変異型とは、一部の遺伝子配列が本来の配列と異なった配列をしている場合の遺伝型のことで、遺伝病を引き起こす原因となります。

遺伝子検査では、特定の変異遺伝子を同定し、その疾患に対してノーマル、キャリア、アフェクテッドの可能性を判定することができます。

しかし、アフェクテッドと判定された犬が必ず疾患の発症をするわけではありません。 また、ノーマルと判定された犬が未知の変異遺伝子やその他の要因等で疾患を発症する可能性もあります。

【主な遺伝病とその症状】

網膜細胞が変性退化して萎縮を続け、次第に視力が低下し初期は夜盲症から始まり、徐々に日中でも見えなくなって最終的には失明に至る遺伝的な眼の疾患です。
早期型PRAでは、生後数ヶ月で発症することがあります。遅発型PRAでは2-7歳までに発症するケースが大半ですが、10歳を過ぎてからの発症報告もあります。

脳内の老廃物であるセロイド・リポフスチンを分解除去する酵素の一つが先天的に存在せず、脳内に蓄積し続け、進行性の運動障害・知的障害・視力障害を主徴とする遺伝性神経変性疾患で、進行すると死に至る病気です。生後18ヶ月(1歳半)くらいまでは全く正常に見えますが、2歳までに様々な神経症状を発症し、ほとんどは3歳以上生存することはありません。

一次止血機構に非常に重要な働きをするフォンビルブランド因子の量的低下、欠損、または質的な異常により止血ができず、出血傾向を特徴とする病気です。フォンビルブランド因子が減少しているタイプⅠ、機能が充分に働かないタイプⅡ、フォンビルブランド因子が完全に無いタイプⅢの3つのタイプに分類されます。鼻の中や歯茎からの出血(粘膜出血)や皮下内出血が特徴的な症状で、最も重いタイプⅢでは出血が止まらず死に至ります。

コリー、シェットランドシープドッグ、オーストラリアン・シェパード、ボーダーコリー等にみられる脈絡膜の局所的な発育不全や網膜内の過剰な血管新生などを特徴とする遺伝性の眼疾患です。外見上ほとんど確認できない軽度のものから、失明に至る重度のものまで症状が様々です。

コリー、シェットランドシープドッグ、オーストラリアン・シェパード、ボーダーコリーなどのコリー系犬種でみられる疾患です。血液中の異物や薬物の脳内侵入を防ぐ遺伝子の一部が先天的に欠乏していることにより、一部のフィラリア予防薬などに含まれているイベルメクチンに対して中毒症状を生じる病気です。

ガングリオシドーシスはライソゾーム酵素のひとつである、β−ガラクトシターゼの欠損によって発症する神経系の遺伝病です。β−ガラクトシターゼの欠損によって中枢神経にGM1ガングリオシドが蓄積し、骨を含む全身臓器にケラタン硫酸やオリゴ糖の蓄積が起きます。その結果、大脳の末梢神経を徐々に破壊しながら運動機能を低下させていきます。柴犬に多くみられ、残念ながら治療法は確立されていません。

変性性脊髄症は進行性の脊髄疾患で、痛みを伴わずゆっくりと麻痺が進行していく特徴があり、日本ではウェルシュコーギーに多く認められています。

遺伝性好中球減少症は白血球の一種である好中球とよばれる血球が循環血液中にきわめて少ないために起きる病気です。持続性の発熱、跛行(歩行困難)、慢性の下痢および食欲不振をはじめとする症状がみられます。犬の遺伝性好中球減少症は骨髄から循環血液中に放出されるべき好中球が充分に放出されないことからおきる疾患と考えられています。

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